第6章 5
エ「それじゃあ、最後くらい海賊らしい事していこうか。」
『へへ、何するの?』
笑って尋ねる私の顎を持ち上向かせる。空いている手は私の腰に回されていて身動きが取れなくされる。
エースの顔が近くなる。そして、私の唇はエースのそれと重なった。
ゆっくりと唇が離されるも恥ずかしすぎてエースの胸に顔を埋める。頭がついていかない。絶対に変な顔してる。
エ「悪りぃ。嫌だったか?」
エースは私の頭を撫でる。
顔を埋めたまま首を横に振る。
エ「好きな女が他の男にキスされたままとか気に食わねぇからな。」
『えっ好きって、、、』思わず顔を上げる。
エ「やっぱ、気付いてなかったのかよ。何回も言ってるだろ!」
エースは自分の頭を掻く。
『気づかなかったよ。エースはみんなに優しいし、、、私、、』
急な告白にどうしたらよいのかわからなくなる。
エ「また、会えたら時に答え教えてくれよな。」
といつものように髪をクシャクシャとされる。
その日は眠れなかった。
眠れぬまま朝を迎えた。スペード海賊団が出航する日だ。
私はリリーと一緒に港までスペード海賊団を見送りに来ていた。デュースさんや先生にもいってらっしゃいと言えた!
後はエースだ。
笑っていってらっしゃいを言おうと決めていた!
エースもやっと甲板に出てきてくれた。
エ「、リリー、行ってくるー!また会おうなー!」
太陽を背にキラキラとした笑顔で大きく手を振ってくれた。
『いってらっしゃい!エース!いってらっしゃいスペード海賊団!』
船は港から離れていく。もうエースの姿は見えない。
そして、船は海底へと沈んで行った。
私は、その場にしゃがみ込んで泣いてしまった。
リリーが側で背中をさすってくれていた。
ひとしきり泣いた後、私は立ち上がった。
『帰ってみんなのご飯にしなきゃね!』
前を向こう!私は私の夢を叶えるんだ!
私とエースが一緒に過ごした時間はとても短かった。
それでも鮮明に思い出すことが出来る。
離れていてもエースの存在が私を強くしてくれた。
この時、当たり前のようにまた会うことが出来ると思っていたのは私がまだ世界を知らなかったからなのだろうか。
私たちはそれから一度も会う事はなかった。