第26章 25
私が落ち着くまでの間ローはずっと抱きしめてくれていた。
おかげで何となくではあるが蘇った記憶を整理することが出来た。
私はローに回していた腕を離した。
ローは割れ物でも触るかの様に私の両頬を撫で、大丈夫かと聞いてくれた。
すごく心配をかけてしまったようで、急に申し訳なくなった。
『ごめんね。心配かけて。ローが側にいてくれてよかった。』
ロー「謝る事じゃねぇ。」
私たちは部屋の隅に座った。
『思い出した事話してもいい?』
ローに思い出した記憶のことを聞いて欲しいと思った。
ロー「あぁ。お前がいいんなら聞きたい。」
ローに思い出した事を話そうと頭の中を整理した。
しかしいざ話をしようとすると少し緊張してしまいローの手をギュッと握った。ローは黙って握り返してくれた。
小さい頃、私の育った孤児院にロイドさんという男性が、時々遊びに来てくれていたこと。
とてもよくしてくれて私の両親の事も知っていた事。
そして私の病気を治すためキュアキュアの実を食べさせたのもロイドさんだという事。
時折、相槌を打ってくれるローに気をよくしてしまい、もしかしたらロイドさんが本当のお父さんだったんじゃないかな、なんてうっかり口走ってしまった。
髪の色が同じというだけだったが、なんとなくそんな気がすると。
口に出してしまえば、ただの私の願望交じりの妄想の様な気がして恥ずかしくなって急いで誤魔化した。
ロー「の髪色は珍しいし、あながち間違ってねぇかもな。」
ローは私の仮説を否定せずに聞いてくれた。
その事がすごく嬉しかった。
そしてロイドさんが母親の名前を教えてくれた事。
名前はティール D ルナという人で私を産んでから亡くなってしまったと。
やっと自分のファーストネームがわかってよかったーと、ローの顔を覗いた。
先程まで真剣に私の話を聞いてくれていたローの表情は明らかに先ほどより険しくなっていた。