第20章 19
「風邪ひくぞ。」
声を聞いただけでローだとわかった。
私は今の気持ちを悟られないように出来るだけ明るく答えた。
『キュアキュアの実の能力者に言う?』
私は笑って言った。
すると、ローは私を後ろから抱きしめた。
ロー「確かにな。だが俺は医者だ。例えお前が能力で風邪を治せてもお前の体の事は心配だ。」
耳の側でローの声がした。
『そっか。ありがとう。気をつけるね。』
出来るだけ普通にしようとしても、ローに抱きしめられると鼓動が速くなるのが自分でもわかる。
顔も相変わらず真っ赤だろう。顔を見られなくてよかった。
ロー「昼間なんで泣いてたんだ?」
ローは抱きしめたままこう質問した。
ちゃんと泣き止んでからみんなの元に戻ったはずだったのに。
ローにバレてしまっていたなんて。
昼間私が泣いていた理由はローには言えない。
ローは自分のせいだと思うかも知れないから。
私は何も答えられなかった。
ロー「俺じゃ頼りにならないか?」.
ローは私の肩に顔を埋めて呟くような声で言った。
『違うよ!でも、、、』
私は振り返ってローを見つめた。
『ローの事は頼りにしてるよ。今だって眠れなかったからローが来てくれて嬉しい。でも、、、昼間泣いてたのは私の問題で、誰かに何かされたとかじゃないし、誰にも話すつもりはないの。心配かけてごめんなさい。』
私はローから目を逸らした。
すると、ローは今度は正面から抱きしめた。
ロー「好きな女を心配するのは当たり前だ。俺が勝手にしてる事だ。謝る必要はない。だがホントに辛くなったならその時は話せよ。話たら楽になることもあるかもしれねぇだろ。」
ロー私を離して頭を撫でた。
『うん!ありがとう!』
私は笑った。
ローの優しさに泣きそうになるのをぐっと堪えた。
ローはそれすら気がついているのかも知れない。
ロー「寝れねぇならもう少し話すか。」
『うん!嬉しい!』
私たちはその場に腰掛けた。
『それじゃあ私の好きな化学の話ね。昔読んだベガバンクの本にね、、、、』
ローはとても物知りだ。
なにげない私の話を広げてくれて新しい発見をくれる。
ローと話していると少しずつ気分は晴れていった。