第13章 12
は俺と能力の練習をしてからもゾロ屋とトレーニングをしている。
さっきまで能力を使って体力を消耗しているのに、無理しすぎだ。
黒足屋もさっきから心配そうに様子を伺ってる。
は頑固な所があるから、きっと俺が辞めろと言った所で聞かないだろうが怪我でもしたらすぐに駆けつけてやろうと見守っていた。
が座り込み立てなくなった。
黒足屋が駆けつける。
それでもやはりはトレーニングを続けた。
は、目の前で大切な人が死ぬのは嫌だと言った。
はどんな過去を持っているのだろう。
孤児院で育ったが何故天竜人を撃ったのだろう。
俺自身も大切な人が目の前で殺され、決して癒えることのない悲しみや怒りを抱えている。
こいつもそんな経験をしてきたのか。
に駆け寄り抱きしめてやりたかった。
しかしそんな事出来る関係ではない。
俺はを見守る事しか出来なかった。
今夜は夜の見張りが当たっていた。
本を持ち込み見張り台に座った。
俺は、おそらく毎晩うなされているのだろう。
昨日の晩飯の後、黒足屋に呼び止められハーブティーを出された。
黒足屋は安眠効果があるからと言いそれ以上は何も言わなかった。
が甲板にやってきて星を眺めているのが見えた。
俺は能力で側に降りて話しかけた。
は嫌な夢を見たと言い、その顔は今にも泣き出しそうだった。
こんな時ぐらい側にいてやりたくて俺は見張りに付き合わせた。
自然と2人で同じ毛布に入った。
いつもの様にが話し、俺は聞き役だったがの表情は少しずつ明るくなっていった。
と話していると、子供の頃フレバンスで家族と一緒に過ごしていた時のような安心感があった。
まだ、地獄を見る前の温かな時間だ。
眠れていないのが嘘の様に眠たくなってきた。
こんなに落ち着いた気分になるのは久しぶりでの能力かと思ったが、違うらしい。
落ちてくる瞼に逆らえず気がつくと夢を見て見ていた。
あまり覚えていないが、いつもの悪夢ではなく穏やかな夢だった気がした。