第4章 甘すぎ天使とおねだり悪魔
「…………」
…………知らない天井。
ボーッと目を開けたまま天井を、眺めていれば。
「起きた?雪乃さん」
「…………起きてない、寝てる。起こさないで」
隣から聞こえた見知った声に。
一気に走馬灯のように蘇った記憶。
恥ずかしすぎて、再度布団の中に逆戻り。
「雪乃さん、寝てる人は起こさないでなんて言わないよ?」
すごく近い場所から聞こえる笑い声と。
布団の上から感じる温もり。
小鳥遊くんの重さの分、ベッドが少しだけ軋んだ。
「ごめんね、雪乃さんのアパート会社から遠いし、俺ん家今妹と一緒住んでるから…………。ホテルとか、嫌だった?」
「…………」
ほんとに。
どっから出すんだろうこの声。
お預けでもくらった仔犬みたいな、寂しそうな声。
表情(かお)とか声とか。
ずるいんだよなぁ。
それに抗えないあたしも大抵イカれてる。
「雪乃さん♡」
少しだけ、布団から顔出しただけでこんな天使の笑顔になっちゃうし。
なんでこんなにも表情豊かに表現できるんだろうこの子は。
思ったことを正直に口に出す勇気すらないあたしからしたら、ほんとに羨ましい限りでもある。
「…………嫌とかじゃなくて、ちょっと、恥ずかしくなった、だけだから」
「あは、雪乃さんけっこう大胆だったよねー」
「言わないで。そしてその記憶今すぐ抹消して」
「えー、無理♡」
…………語尾、おかしいから。
そしてそれをかわいい、なんて思っちゃってるあたしも相当おかしい。
「…………」
って。
あれ?
あんま良く見えてなかった、けど。
なんかこの部屋。
「…………やたら、広くない?」
「スイートだもん」
「…………」
え。
え?
「…………はぁ?」