第4章 甘すぎ天使とおねだり悪魔
何、やってんのこの子は!!
普通スイートとかとる?
え、だって。
ええ?
「待って待って、スイート?あたしそんなお金、持ってないんだけど」
「まさか、雪乃さんになんて払わせらんないよ」
「…………」
「ん?」
「…………小鳥遊………、くん」
「なーに?」
「キミはただの会社員じゃないの?」
「やだなー。ただの会社員ですよもちろん。このホテルのオーナーのお嬢さんとちょっとした知り合いなだけですって」
「知り合い?」
ちょっとした?
「うん」
…………どんな?
とか。
聞ける立場ですら、なくない?
あれ?
ちょっと待って。
今。
この関係ってなんだっけ?
ちょっと待ってちょっと待って。
そうだよ。
もともと。
『ご飯、もらっていい?』的なあれで。
あれはそう、あくまでご飯、なわけで。
え。
待ってこれ。
…………セフレ、的な?
「雪乃さん…………」
なんて。
人が脳内百面相、しちゃってれば。
ギシ、ってまた、小鳥遊くんがベッドを軋ませた。
「え…………」
ベッドに腕ついて。
まんまと容易く小鳥遊くんの腕の中。
俗にゆー、床ドンてやつ。
「忘れちゃった?俺に隠すの無理だよ。全部筒抜けなの、忘れちゃったの?雪乃さん」
「あ…………」
「思い出した?」
またにっこり、悪魔な笑顔。
いつもの無邪気な天使の笑顔じゃなくて。
あたしだけが、知ってる。
「そうだよ、雪乃さん。俺言ったよね?雪乃さん好きって。忘れた?」
『雪乃さん、好き…………』
「あ、あんなの、誰にでも、ゆーんでしょ」
思い出した映像が生々しくて。
思わずふい、と視線をそらす。
そらしたあとに後悔したってもう遅い。
口から出た言葉は戻せるはずなどないわけで。
なんでこう、可愛げがないんだろう。
変な歳上のプライドが、邪魔。
「どーせ、そのお嬢さん、とやらからもご飯もらってるとか、そんなでしょ」
ああもうほんと、バカ。
閉じろ、口。
これ以上醜態晒さないで。
「…………そうだよ?」