第1章 世界一かわいい悪魔は今、腕の中で天使になる
「………ご飯、ですよ」
「だから…………」
「リッカには、ご飯なんです………」
え。
あれ。
なんか俺まずいこと言った………。
急に俯いて。
………もしかして泣いてたりする?
「ごめん俺………」
「ごめんなさい凛太郎。あたし、それがないと生きていけない。自分でもなんでってすごく思うけど、ご飯なんです。リッカたちには、大事な栄養なんです………」
「………なんか、ごめん俺」
「ごめんなさい、ごめんなさい………」
ぐすぐすと流れる涙を両手で拭って。
「さよなら」
って。
急に立ち上がるから。
「待って」
思わず引き止めた右手。
彼女の驚いたような視線が右手に向けられた。
「ごめん。帰んの、待って」
「凛太郎?」
「ちゃんと聞くから。ほんとは昨日俺酒たくさん飲んで、全然記憶ねーの。だからごめんなさい。もう一回、キミの話聞かせてもらえる?」
「…………はい」
ちゃんと向き合わないで謝ったところで余計この子傷付けるだけなのに。
俺ってほんとバカ。
だけど。
そんな俺にもこんな綺麗な笑顔向けてくれんだな、って思ったら。
どんな訳ありにしてもちゃんと受け止めようって。
ほんとにそう思った。
「淫魔なんです、あたし」
いきなりキャパ超えかよ。
「…………はい?」
受け止める次元、全然違うじゃん。
「サキュバス、なんです」