第4章 甘すぎ天使とおねだり悪魔
「小山内ってさ、ほんと不器用な」
「…………いきなり悪口ですか」
「まさか。褒めてんだよ」
…………どの辺が?
「タバコはもういいんですか、荻野さん」
あ。
この声。
「小鳥遊。やべ忘れてた」
「…………聞こえてますけど」
聞き慣れた声に振り向けば。
拗ねた子供みたいな顔して彼、小鳥遊くん、が、壁に凭れて立っていた。
「別に待ってなくていいっつったろ。俺これ手伝ってから帰るから、おまえ先帰っていいぞ」
「いえ荻野さん、小鳥遊くんずっと待ってたみたいだしあたし1人でほんと大丈夫だから…………」
「なんだよそんな拗ねることねーじゃん、悪かったって」
「別に荻野さんに拗ねてませんから」
「は?」
あ。
これ…………。
「何で俺じゃなくて荻野さんにヘルプ頼んでんの?『雪乃さん』」
「雪乃、さん…………?」
「いや、別に深い意味はなくて!!小鳥遊くん、いきなり何言ってんの、びっくりするじゃん!!」
「荻野さんこそ帰っていいですよ。あとは俺が雪乃さん手伝うんで」
いや、聞いて!?
話!!
余計拗れるからさぁ。
「…………ふーん。じゃ、あと頼むわ小鳥遊」
「いえ!!待って荻野さん!!違う…………」
「おまえもそんな顔すんのなー、小鳥遊。かわいい後輩同士、仲良いのは嬉しい限りだけどな」
「いやだから…………、違う」
「何が違うの?雪乃さん」
キミは黙ろうか、一回。
荻野さんもニヤニヤすんのほんと、やめて。
ああ………、もう。
本気で帰ったよ。
あの人。
にやけ顔が脳裏に張り付く。
「雪乃さん、そんなに荻野さんと残業したかった?」
違う!!
もう。
勝手にそれぞれあたしの心決めないでよ。
だいたい。
「何で急に雪乃さんなのよ。会社では呼んだことなかったじゃない」
「…………荻野さんに、知られちゃ不味かったですか?」
…………だから。
何故そーなる。