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ウチの悪魔は『待て』が出来ない

第1章 世界一かわいい悪魔は今、腕の中で天使になる








「はぁー」


「荻野さん、最近ため息ばっか。なんかありました?」
「いや、別に」



あーだめだ。
長いサラサラの髪見るとどーしても目で追っちまう。
また来るっつったのに。
あれから1週間。
全然音沙汰ねぇし。
はぁ。
だよなー。
所詮、飯だもんなー。


「最近飲みに誘ってものってこないし、絶対なんか変ですよ」
「おまえは飲み代浮かせたいだけだろーがどーせ」
「やだなーそんなことありますよー」
「…………」




営業の帰り道、たまたま入ったコーヒーショップ。
3つ下のかわいい後輩は、おんなたちが良く言う天使の笑顔、とやらを振り撒き笑った。
こいつなら酒くらい俺じゃなくても奢るオンナくらいどーせいんだろーに。
何故か懐かれてんだよな。


「なぁ」
「はい?」
「おまえさ」

どーせ馬鹿にされんだろーな。
俺だってきっと鼻で笑う。


「…………悪魔、とかって存在すると思う?」
「…………」


あ。
ほらやっぱ。
固まった。
そりゃそーだよな。
俺も何わけわかんねぇこと言ってんだか。
だいたいあれは俺の夢かもしんねーし。
都合いい夢見てただけかも、なんて。
時間とともにそんな風に思えたりもする。
まぁあれだ。
きっと所詮、んなもんだったってことだ。


「わり、やっぱなんでもねぇわ。忘れて」
「いるんじゃないですか?」


ため息とともに吐き出された言葉に被せられた、言葉。


「は?」
「今の世の中なんでもありじゃないですか?なら、そんな存在くらい居てもいーのかなーって」
「…………おまえ」
「俺は、思います」


「案外いいやつなのな」


絶対笑われるって思ったのに。
馬鹿にされるって。


案外。
オンナどもは良く見てんだな。
確かに天使の笑顔。
あながち間違ってなくも、ない。


「荻野さん?今俺に見惚れました?」
「はぁ?」
「熱い眼差しだったんで」
「調子乗ってんなバカ」



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