第1章 Bocca della Verità 死柄木弔(ヒロアカ)
そこにスーツ姿の小柄な男性が入ってきた
「おっと…あんま会話しない方がいいぜ」
今歩と話していた刑事の腕を引っ張る
「コイツの個性は異性には効きすぎる…最悪、死ぬぜ」
そう言って刑事をシッシッとカーテンの向こうに追いやった
「はじめまして、俺は捜査一課の死見不(シミズ)だ。お前の個性については雄英高校の校長に聞いた。俺もまぁ男な訳で、死にたかないんでね、ほらよ」
シミズ刑事はベッドに電子メモパッドを放り投げた
「俺は普通に話すが、お前はこれに書いて答えてくれ…っても、何から話せばいいやら」
歩は電子メモパッドからペンを引き抜くと
お母さんが死んだっていうのは本当ですか?
と殴り書きした
シミズ刑事はメモパッドと歩を交互に見ると、フーっと大きく息を吐き
「ああ…」
と答えた
歩の目から涙が溢れる
でも…個性を発動させてはいけないと、咄嗟に頭から布団を被り、声を押し殺して泣いた
私の声は…涙は…人を殺す
「…そのままでいいから聞いてくれ。今回のお母さんの死はな、交通事故だったんだけど、ガソリンに引火して大爆発起こしちまってな…二体とも損傷がかなり激しかったんだ」
二体…?
「俺の個性は、遺体に触れると死ぬ直前の人間が何を見たか知ることが出来るってシロモノでな…警察になるべくして産まれたって感じだろ?」
歩には刑事が言わんとしていることが分かった
「お前のお母さんは確かに事故死だった…しかし、隣に乗っていた男子高校生は事故の時にはもう亡くなってた…そして、最期に彼が見た映像には君が映っていた」
私は布団の中で彼の推理に聞き耳を立てる
「つまり…お前はあの男子高校生に襲いかかられ、個性が発動してしまい、彼を死に至らしめてしまった。それを隠蔽するために母親が事故を装い、遺体と無理心中した…ってのが俺の見解なんだけど」
多分そうなんだろう
そう、だとして一体なんだと言うのだ
一夜にして愛した人も最愛の母も同時に失ったという事実は何も変わらない