第1章 Bocca della Verità 死柄木弔(ヒロアカ)
涙を流しながら逃げ惑う歩を見て、ナオは激しく興奮した
「ハァハァ…歩…待てよ」
虚な瞳、紅潮した頬、汗ばんだ肌、荒い息遣い
見たことのないナオの雄の顔にドキっとしながらも、これは私の個性がさせていることだと自分に言い聞かせて歩はひたすら彼から逃げ続けた
しかしヒーローを志す男子生徒の身体能力は思いのほか高く、追いつかれた歩はついにマリア像の足下でナオに押し倒されてしまった
「ナオ…お願い…やめて…ナオが…ナオが…」
床に組み敷かれながら涙を流し、懇願する
それが逆効果だとも知らずに…
「ハァハァ…その声、たまんない…欲しい、歩の全部」
男の力で押さえつけられ身動きが取れない
「やだ…ナオが死んじゃう!!んんんん!」
強引に唇を奪われる
こんなはずじゃなかった
愛する人との口づけ
こんなはずじゃ…
クチュ…クチュ
歯の間から舌をねじ込まれ、口内がナオでいっぱいになる
本当なら嬉しいはずの愛する人とのキス
それなのに歩の目からはとめどなく涙が溢れる
声、涙、それにキス
歩の個性によって、ナオの理性は完全に消し飛び、我を忘れて歩に襲いかかる
「ハァハァ…歩、歩、歩」
クチュ…ジュル…
口内にナオの唾液が流れ込んでくる
私だって…好きな人にこんな風に求められたら、頭がクラクラして何も考えられない
左右にシャツを引きちぎられ、ボタンが弾け飛んで床に散らばる
ナオは乱暴に下着を捲り上げると二つの膨らみに貪りつく
「ハァ…歩…ずっとこうしたかった」
それはナオの本心なのかそれとも私の個性がそう言わせたのか…
ねぇマリア
教えて
私が一体何をしたと言うのですか
私たちを見下ろすマリア像に問いかけるけれど、答えが返ってくるわけもなかった