第1章 Bocca della Verità 死柄木弔(ヒロアカ)
「"真実の口"は特に優れた橘家の娘であり、なおかつ相当のショッキングな出来事により発現される個性。しかも真実の口の能力を持つ女性から産まれた男子は、世界を救いも滅ぼしもする強い個性を持つ…とされているの」
「なにそれ」
「歩は個性婚って知ってるわよね?」
「うん」
個性婚とは、より強い子孫を遺すためにパートナーを惚れた腫れたではなく個性によって選ぶことである
「"真実の口"の保有者に子供を産ませてそれが男児だった場合、強大な力を手に入れることが出来る…」
「つまり、狙われるってこと?」
「おそらく。それこそ今は医療技術が発達してる…悪い人にこの能力が知られてしまえば…」
母はそこで言葉を詰まらせた
つまりはこの個性を悪用しようとする人間が歩を拘束し、人工的に妊娠させ、男児が産まれるまで…あるいは可能な限り何人もの子を産まされるだけの家畜にされる可能性があるということ
「…ママ、大丈夫…ママが思うようなことにはならない」
「え?」
「相手がおかしな動きをすれば、個性を使って操ることが出来るんでしょう?」
「…歩…」
母を案じて気丈に振る舞う歩
「でもママは…あなたに普通に幸せになってほしかった…好きな人と愛し合って、子供を授かるような普通の幸せを…」
「もちろんそのつもりよ、真実のパートナーを見つけて、その人の子供を産んで普通に幸せになるから」
歩がそう言うと母は涙を流しながら微笑んだ
「歩、雄英高校に入らない?」
「そこって…」
「そう、ヒーローになるための学校」
「この個性でヒーロー…?」
「どんな個性だって関係ない、あなたの個性は特別よ。それに橘家の言い伝えも雄英高校なら知ってくださってる先生がいるから、通いやすいはず」
「そうなんだ…考えてみようかな」
こうして歩は雄英高校に進学することになった