第5章 やっと追いついた!
「あ!あれって石臼じゃないですか!?」
台所の隅を指差したので、釣られるように視線を追った。
「あー、すみません。勝手に作ってしまって。」
私は苦笑しながら、頬を掻いた。
キビモチを挽くのにすり鉢だと面倒で、小さいタイプを作ったんだよね。
私、土遁の才があって一番得意なの。
それこそ火遁よりも。
うちはなのにどうなの?って思わなくもないけど、極めたら色々作れるようになって、これはこれで便利です♪
「いやいや!僕、前々から石臼欲しかったんです!見てもいいですか?」
「どうぞどうぞ。」
促すと、ウルジさんはすぐさま駆け寄った。
めっちゃ嬉しそうだね。
「挽き心地も滑らかですね。粉もとても細かそう。」
下の受け皿的に作った土台石にに指を滑らせて、残っていた粉を掬っていた。
目がキラッキラしてます。
あ、そうだ。
「よかったら使いますか?私もう使わないんで。」
石臼だって買えばそれなりの値段になる。
それをタダで、運搬料も設置料も掛からないとなれば、お得なんじゃなかろうか?
「い、いいんですか!?ぜひ欲しいです!」
「じゃあ、これが宿泊の対価って事でどうでしょう?」
提案したら、ぱあっと顔が綻んだ。
「はい!ありがとうございます!」
よしよし。
交渉成立ね。
「配置はここで大丈夫ですか?もっと邪魔にならない所に置きましょうか?」
「いいえ、ここで大丈夫です。」
「分かりました。それじゃあ、片付けしたらここ出ますね。」
「え?もう立たれるんですか?」
「はい。あの二人を追わなきゃいけないし。」
「大丈夫ですか?もう日も暮れますよ?」
ウルジさんは、言いながらも外をちらちらと伺う。
そりゃまぁ、普通は夜出発しないよね。
山登りじゃあるまいし。
けど、私はこれでも鍛えてるのよ。
私は、にっこりと笑い余裕を見せる。
「平気ですよ。私も忍の端くれですから。」
ちょっとやそっとじゃびくともしないよ。