第5章 やっと追いついた!
「ただいま〜。」
「戻ってきましたか。」
私の声に、鬼鮫さんが部屋の隅で本を読みながら答えた。
「火の番、ありがとうございました。」
お陰で部屋が暖かかい。
パチパチっと火の弾ける音が聞こえるくらいには火が強い。
まぁ、そのくらいじゃないと隙間風がすごいから暖まらないよね。
「何か採れました?」
「はい。兵糧丸の材料が全部採れました。それと、傷薬の材料もありましたよ。いい所ですよね、ここ。」
「こんな簡素な所を見ていい所って言うのはあなたくらいでしょうね。」
「そうですか?私がここに住んだら、ここら辺で採れる薬草で薬作って売りますけどね。いいお金になりますよ、きっと。」
私がほくほくとしながら言うと、鬼鮫さんがふっと笑う。
「あなただからこその発想ですね、それは。」
言われて、私は少し笑って肩をすくめる。
確かに、医学の知識がなければ難しいかも。
「かもしれませんね。さてと、お昼作りますね。」
早速、調理道具を取り出そうとしたところで、
「我々は、昼はいつも食べません。兵糧丸で間に合いますから、作らなくていいですよ。」
「え…?そう…ですか?」
え、どうしたんだろ。
お粥が嫌だった?
「それよりも兵糧丸を作るのでしょう?そちらを優先した方がいいですよ。時間がかかる物なんだから。」
思わずじっと見たら、素気なくそう返された。
「はい…。じゃあ…。」
なんか、釈然としないなぁ。
でも、要らないって言われたら作る意味はないよね。
イタチも寝てるみたいだし。
私は自分のお昼用に、キビモチを一合分小さな鍋に入れて炊き始め、兵糧丸の製作にかかった。