第18章 白虎のお里に行ってみよう
星の動きや位置から、おそらくは日付を跨いだ頃だろう。
白虎からは、すぅすぅと寝息が聞こえてくる。
エニシは、船を漕ぎながらもはっと気づいて、変わらない周囲を見てはまた船を漕ぐ、を繰り返している。
そんな彼女を見て、カカシは苦笑しながらも薄らと周囲を警戒していた。
夜の海は、一面黒い沼のように見える。
昼の姿とはまるで真逆な印象を抱くのは、何とも不思議なものだ。
どちらも、海であることに変わりはなく、あの波間の下には昼も夜も変わらない世界が広がっているのだろう。
色彩能力に長けた人間だけが、違うものとして捉えるのだ。
色の印象とは面白いものだ。
ふと、気が付くと、船を漕いでいたエニシの動きが止まっていた。
かと言って、寝ているわけでもないようだ。身じろぎの仕方や、双子の様子を伺う仕草からそれが分かる。
だが、彼女を見ていると、何処となく不安になってくる。
「エニシ…?大丈夫…?」
カカシがそっと問いかけると、彼女はこくりと一度頷く。
こちらを振り返る気配はない。
「…もし、具合が悪いんだったら言いなよ?」
これにも、彼女はこくりと頷くだけだ。
カカシはそれ以上何も言えなくなってしまった。