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もう一度、を叶えるために。second

第18章 白虎のお里に行ってみよう




暫く、息を潜めるようにして様子を伺っていると、小さな歌声が聞こえてきた。
海風や波音で掻き消されがちではあるが、聞いたことのない旋律で聞き慣れない言語だった。

ーどういうことだ…?

エニシの歌う歌は何度か聞いたことがあったが、どれも聞き取れる言語であったし、あったとしても時々入り混じる程で、全文が聞き取れないなどということはなかった。


『私は、多重人格なんじゃないか、と…。』


不意に蘇った言葉に、心臓がどくん、と嫌な音を立てる。

ーまさか、本当に…?

カカシは、どう声をかけていいのか分からず、ただじっと後ろ姿を見つめるしかない。
そうしている内に旋律は終わり、エニシは心なしか気落ちしたように見えた。
益々焦っていると、ふっと気が抜けたように彼女が後ろに倒れてきて、カカシは抱き留める形になった。
顔を覗き込むと、彼女はすやすやと寝入っているようだった。
先程の気配は綺麗に消え、穏やかな寝顔をしている。

ー本当に…多重人格なんだとしたら…。

カカシの彼女を抱く手に力が入る。
もしも、エニシが別人格を御せなかったら。
もしも、別人格が暴走したら。
もしも、エニシが消えてしまったら…。
想定を繰り返していく内に、本当にそうなってしまったら、と想像して怖くなる。

「エニシ…。」

カカシは、ぎゅっと彼女を抱き抱えて、闇のように迫りくる不安を宥めていた。

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