第5章 やっと追いついた!
音もなく、陽が次々に町を照らしていく。
その頃には、家々から生活音が聞こえてきていた。
あれからすぐに鬼鮫さんも目を覚まして、二人で火を起こした後に団子を見てみたんだけど、見事にカッチカチに固まってたんだよね。
茹で直してみたんだけど、いまいち美味しくないの。
なので、食べ物を分けてもらいに行こうと思い立った。
あわよくば、キビモチのお裾分けも狙っている。
「よし、ちょっと出てきます。」
「昨日のきび団子ですか?」
イタチは寝ちゃったみたいで、鬼鮫さんがお見送りしてくれる。
「それもありますけど、食べ物を分けてもらえないか交渉してきます。」
「兵糧丸でいいじゃないですか。」
「まぁ、それでもいいんですけどね。イタチは病み上がりなんで、もうちょっと消化にいい物の方がいいじゃないですか。」
それにイタチの胃は、今荒れ放題だ。
機能してるとはいえ、使えばきっとチクチクと痛むだろう。
「すぐ戻るんで、イタチをお願いします。」
そう言うと、鬼鮫さんはちょっと奇妙な顔をした。
「律儀な人ですね、あなたは。」
「そうですか…?」
「そうですよ。私に態々”お願いします”なんて。」
そうかな…?
診ててもらうんだから、当然じゃない?
「お願いします、とか、ありがとう、って人としては普通の礼儀って感じなんで、そう可笑しい事じゃないと思いますよ?」
首を傾げながら言うと、何故かため息をつかれた。
「そう言う事でもないんですが…。まぁ、いいですよ。診てますからさっさと行ってきてください。」
しっしっと猫を追い払う様に手を払いながらくるりと向きを変えてしまう鬼鮫さん。
だからなんなのさ。
まったく、もう。
私はムッとしながら家を出た。