第17章 持ちつ持たれつでいきましょ
「でも…、疑問に思うんですけど、何で先生は私を追ってきたんですか?」
現場で状況が分かったんなら、事情だって大体分かるだろうに。
「そりゃそうでしょ。…いや、謝罪が先だな。今回は悪かった、完全に俺達の失態だった。」
真摯に頭を下げる先生にぎょっとする。
「いやいやいや、いいですって。っていうか、私も完全に予想外でしたし。まさか、屋敷まで見張られてたなんて思いもしなかったですから。」
根に付け回されてることは知ってたけど、まさかここまでなんて思うわけないじゃん?って感じだった。
先生は私を見て、ふっと笑ってから居住まいを戻した。
「ま、そんなわけだからさ、可能なら様子を知りたかったんだよ。綱手様だってかなり落ち込んでるし。」
「え!?綱手様が!?」
しょぼくれてるとか想像つかないんだけど!
「いや、お前の想像とはちょっと違うと思うけど。心配で気が立っててさ、若干周りに当たり気味なんだよ。」
「あー…そっち…。」
滅多にないんだけど、綱手様ってジレンマに弱いっていうか。
綱手様にとって、思い通りにいかないと思うことって、案外と少ないんだよね。
大抵のことは想定内っていうか、「そんな時もあるだろ」って笑い飛ばせる。
「ま、シズネがついてるからな。そのうち落ち着くだろうけど。」
そうかも知れないけど…。
綱手様自身も心配だし、負担がのしかかってきてるシズネさんも心配だ。
「伝書鳥って放ちます?」
「放つよ。綱手様に報告するから。」
「その時、私も一筆入れていいですか?」
ダメ元で聞いてみたら、先生は少し驚いたあと、優しく笑う。
「いいよ。その方が綱手様も喜ぶよ。」
「ありがとうございます。」
良かった。
…綱手様も、気にしなくていいのになぁ。
「ま、思ったよりケロリとしてて安心したよ。」
先生はそう言って、わしゃわしゃと私の頭を撫でた。