第17章 持ちつ持たれつでいきましょ
この世界ってさ、そういう理念があるようでないっていうか。
頂点である忍の世界を起点としてるからか、なんかそういうのが薄いんだよね。
前世じゃあ、そういうのって道徳とかで習うけど、それでも、分かってたって実行できるって人は半々なように思う。
それは、どこか他人事だから。
自分がやらなくても誰かがそれなりにやってくれる、っていう感覚。対岸の火、みたいな。
私だってそうだったし。
それは、長門さんが言うように痛みを知らないからっていうのもあるかもしれない。
でもね、ここの人達にとっては、痛みって極々身近なんだよね。
色々な脅威と隣り合わせだから。
だから、意外と’’持ちつ持たれつ’’はかなり根強く浸透したっていうか。
今じゃ、ここの地域の人は大体がその精神を持ってるの。
白も斬不斬さんも、案外その一人なのかもしれない。
私は、根付に繋がったシルバーの鍵を見る。
…うん、持ちつ持たれつに私は応えるべきなんだろうな。
いつか、また違う形で恩を返そう。
「じゃあ、ありがたく貰うよ。」
白に返すと、彼は嬉しそうに笑う。
「道中、お気をつけて。」
「うん、白も暁には気を付けてね。」
私関連でとばっちりがいくかもだからさ。
「ご心配には及びませんよ。」
不敵に笑う白を見て、ふはっと吹き出した。
「頼もしいねぇ!それじゃ、いってきます!」
見送ってくれる白に背中を向け、私達は夜の闇に紛れていった。