第17章 持ちつ持たれつでいきましょ
それを聞いて、斬不斬さんがガシガシと後ろ頭を掻く。
「はぁ…見てらんねぇよ、ったく。…ほら。」
カチャカチャ、と音を鳴らした物を目の前に落とされて、慌てて受け止めた。
「…鍵?」
何の?
「あと、これが地図だ。…いいな、人に聞いて回るんじゃねぇぞ。ちゃんと地図から読み解けよ。」
斬不斬さんの念押しに、益々はてなマークが浮かぶ。
「隠れ家です。万が一の時の避難場所、といったところですね。」
白が補足を付け足してくれて、何の鍵なのかが分かった。
分かったんだけど、ここまでしてもらうのはちょっと甘えすぎのような気もする。
「あの、斬不…」
「食料も三日分くらいならあるだろう。あとは自分達で何とかしやがれ。」
断る暇もなく、捨て台詞のように言って中へ戻って行く斬不斬さん。
白はくすくすと笑う。
「どうぞ、使ってください。エニシさんにはそれだけの事をして頂いてるんですから。」
「いやいや、買い被りっていうか、大袈裟っていうか…。」
こんな大きなプレゼント、困っちゃうよ。
「エニシさん。人は持ちつ持たれつ、でしょう?」
おっと?ブーメラン?
「「持ちつ持たれつ?」」
鸚鵡返しで聞く双子に、白は目線を合わせてにっこりと笑う。
「人は支え合って生きていくものだ、という意味ですよ。エニシさんが僕達に教えてくれた言葉です。」
「あ、ははは。参ったね、こりゃ。」
うん、確かにここに来た当初から触れて回ってた。
平和を目指すには、’’情けは人の為ならず’’が一番なんだもん。
我こそが一番の精神じゃ、人の和は作れないと思う。
前世知識もなく、チームワークを重視した先生はある意味凄いと思う。