第16章 みんなで呑もうよ♪
「…念入りだねぇ。」
「すみません…。自分にとっては一大事なもので…。」
本当にそうだったら、異端者もいいとこだ。
「その、実は…。とある人から言われたことなんですが…。」
うん、と相槌を打つ先生に怖々と口を開く。
「私、その…ピンチになると、無意識的に行動する癖がありまして…。その状態を見た人が言うには、私は多重人格なんじゃないか、と…。」
聞いた先生は僅かに目を瞠ったけど、すぐに元に戻した。
「…うん、それで?思い当たる節でもあるの?」
私は、こくんとゆっくり頷く。
「その…、時折、夜しっかり寝てる筈なのに寝不足の様になる時があって…。気のせいだと思ってたんですけど、あまりにもちょくちょくあるもんだから、さすがに変だなぁとは思ってて…。それが、別の人格が私の体を動かしているせいなんだ、と…。それに、会話をしてるんですって。無意識の私と。」
「…無意味に言葉を発してるとかじゃなく?」
「寝言みたいなのとは明らかに違うみたいです。」
「それって、自覚症状は寝不足だと感じるだけ?」
「はい…。あ、あと、死にそうなピンチの場面で意図的に切り替わる時っていうか…。でも、それすらも単に利害が一致したからってだけの話かもしれなくて…。」
「…その時に、チャクラ切れ起こしてる?」
チャクラ切れ?
「いえ、ぜんぜん。半分以上はある状態です。」
半分どころか、満タンに近いかも。
「成る程、ね。」
先生はそう言って、少し考え込む。
「ま、仮にそうだとしても、今回の件は、違うと思うよ。」
「…え?」
違う?
「チャクラ切れってのは、生命維持を優先するから強制的に休眠状態になる。そうだろ?」
「まぁ、はい…。」
「仮にお前が多重人格だとして、別人格が休眠状態の体をここまで動かせるとは思えない。大体、家は何処にあったの?」