第16章 みんなで呑もうよ♪
「多分、それですね。本人達は家出したって言ってたんで。」
「…それ、御親戚に見つかったら大問題じゃない?」
紅が心配そうな声音で相槌を打つも、問題はそれ以上だ。
「そもそも、素人が白虎を捕らえてたなんて知られる方が不味いでしょ。」
虎よりも獰猛な生き物を、手綱を握る事もせずに敷地で飼うこと自体が問題である。
脱走された後、被害がなかったから良かったものの、一歩間違えればSランクに匹敵する事態になっていたかもしれない。
「そもそも、世話も儘ならない虎を飼おうって方が間違いだと思うんですよね。子供の時のあの子達でさえ、遊び相手になる人が誰もいなかったんですよ?生き物を買う資格ないと思います。」
「虎だと侮ってたのね。」
「侮った上で、それでも相手に出来ないとか阿呆ですよ。」
ふんす、と鼻息荒く怒ったエニシが、「あ」と何かを思い出して止まる。
「一度だけ追っ手が掛かったんですよ。暗部とハンターが手を組んだっぽくて。もしかして、あの御親戚、白虎だって分かってて手元に置いてたのかも。」
それで、カカシにはぴんとくるものがあった。
「ふ〜ん。」
「成る程ねぇ。」
紅もぴんときたらしい。
「なになに?」
エニシだけが、ぴんときていなかった。
「闇市よ。」
紅の答えを聞いて、彼女は嫌そうに顔を顰める。
「…好きだねぇ、人間って。やっぱ金持ちって頭がオカシイよね。」
大名である鳴海の一族で最近、きな臭い噂が出始めている。
希少価値の高い獣を、裏で売買している、と。
一族全てではないものの、連座は免れないだろう。
鳴海自ら必死に火消しに走っている。