第5章 やっと追いついた!
私は一度手元の小さな籠を見る。
生憎と、私は兵糧丸を持ち合わせていない。
宿暮らしが長かったし、ご飯は食堂が多かったから。
籠の中身は精々が十数個。
半分に割ったら腹は満たされないだろうな…。
私はちらっと鬼鮫さんを見る。
「あとでほしいって言ってもあげ…」
「だから要りませんって。」
即行答えが返ってきたし。
何でそんなに嫌がる?
ま、いいや。全部食べちゃおう。
私は思い直して、今度は黄色の団子を食べてみた。
で、すっごく驚いた。
「これ…!!」
きび団子じゃん!!
まじで!?
これ、もっとほしい!
私は衝動的に外に飛び出した。
「真っ暗だし…。」
町は灯り一つ見当たらない。
寝るの早っ!
なにか?
ここはじーちゃん、ばーちゃんの集落ですか!?
ガタッと音がして後ろを振り返ると、鬼鮫さんが出てきた所だった。
「何ですか?一体。」
若干の呆れを含んだ声音だったけど、それよりもこの真っ暗さの方が衝撃的だった。
だって今、九時か十時位だよね?
「…今って何時くらいですか?」
一応、聞いてみた。
だって、ほら。
私が治療に集中してただけで、実は夜中だったりしないかと思ってさ。
尋ねると、どこからか懐中時計を出して確認してくれる。
「九時を少し回ったところですね。」
…やっぱり合ってたよ!体内時計!
ある意味すごい所だわ。
まぁ、それはともかく。
きび団子もっと欲しかったわ〜。
私はがっくりと肩を落として、とぼとぼと家の中へと入っていく。
「何がしたいんですか?」
「団子の中に一つだけきび団子が入ってたんで、それがもっと欲しいなと思って…。」
「きび団子?」
そんな物?って響きだけど、バカにできないのよ?
日本じゃポピュラーな食品だけど、ここだと滅多にお目にかかれない物なんだから。
何でか知らないけど、非常食とか、有れば保存しておく、みたいな程度の食材で、作ってる人が殆どいないのよ。