第15章 決別
イタチは俯き、肩を落とす。
やはり、最初から受け入れるべきではなかったのか。
エニシに押し切られて再び繋がった縁だったが、何が何でも遠ざけるべきだったのか…。
じくじくと胸が痛む。
殺したくない、壊したくない、と叫ぶ自分がいる。
一方で、すぐにでも殺すべきだ、生かしてはおけないと戒める自分もいる。
両極端な想いが嵐の様に身の内でのたうち回り、あらゆる痛みを刻んでいく。
イタチは詰めていた息をゆっくりと吐き出していく。
その吐息は、彼らしくもなく震えていた。
「…ならば…、もうここには用はない。」
エニシの手を握っていた両手をすっと緩める。
すると、何故かエニシがその手を反対に握り返してきた。
「知恵比べ…しよう。」
―…突然、何を言い出すのか。
「私はイタチを諦めたくない。死んでほしくない。兄弟で仲違いしたままでいてほしくない。」
「…俺はそのままでいい。それがサスケの為だ。」
「私はそうは思わない。だから止める。絶対止めてみせる。だから…。」
そう言葉を切って、エニシは顔を上げる。
「知恵比べしよう。」
そう言い切ったエニシの瞳には、瀬戸際に立たされた者の様な絶望の色はない。
こういう目をしたエニシはとても厄介だとイタチは知っている。
それだけに、彼の眉は自然と顰められていく。
「…俺は望まない。」
「私はイタチに殺されない。殺されない様に逃げて逃げまくるから。イタチも私を止めたいならそうしたらいい、見つけた時は殺しても構わない。だけど、その前に私は絶対見つけられない。」
「…エニシ。」
「止めないで。」
ぎゅっと握られる手は弱々しく、言葉とは裏腹に震えている。
それでも、イタチは振り切らなければならない。