第15章 決別
ー殺すしか…ないのか…?
だが、どうしても踏ん切りがつかない。
手にした温もりを壊したくなかった。
大事に囲って奥底へしまっておきたいと思ってしまう。
それでは駄目だと分かっているのに、心が儘ならない。
滲んでもいないのに、血が噴き出るような痛みすら感じる。
「エニシ…。」
せめぎ合う心のままに、イタチは彼女を呼ぶ。
「ん〜?何〜?」
生返事をする彼女に、イタチは心を彷徨わせながらも言葉を探す。
―…せめて食事が終わってから…。
最後の時間となるだろう。
それを台無しにはしたくなかった。
「話が、ある…。」
絞り出す様なイタチの声に、エニシは気づかぬまま食材と格闘している。
「話?うん、分かった。あちっ。」
いつもと変わらぬその後ろ姿を、イタチは想い出に焼き付ける。
もしも小さな頃のまま、変哲のない穏やかな日常が続いていたら、とイタチは思わずにいられない。
この風景が当たり前だったらどんなに良かっただろう。
イタチはエニシが食事を作り終わるまで、ぼんやりと眺め続けた。