第5章 やっと追いついた!
始めてからどれくらい経ったのか。
明るかった外は、段々と暗くなり、手元が覚束なくなったところで、鬼鮫さんが部屋の明かりをつけてくれた。
電気は通ってないみたいで、松明みたいな灯りだったけど。
進捗としては、肺全体の炎症は治ってきた。
音もクリアになりつつあるけど、末端の肺気腫までには到達していない。
イタチは体力を使い果たしたらしく、気を失っている。
チャクラも残りわずか。
けど、私の残存チャクラもそう多くはない。
イタチのチャクラをあまり使えない事もあって、私のチャクラをイタチに馴染ませながら使ってるから、牛の歩みの様に時間がかかる。
どうしようか。
ここで私のチャクラを使い切るのはよろしくない。
出来れば温存したい。
だけど、肺気腫まではなんとかしてあげたい。
迷っていると、玄関扉がガタッと開いた。
「あ、あの〜…。」
その声に鬼鮫さんが立ち上がって、玄関に向かう。
「なんの御用ですか?」
「こ、これ…。み、みんなで作った団子の、あ、あまりですけど…。良ければ…。」
え、お裾分け?
正直ありがたい。
「お気遣いありがとうございます。ですが結構です。」
お、おいおい!ちょっと待て!
折角くれるって言うんなら貰ってよ!
私は慌てて玄関へ向かう。
「あの!それ、貰っていいですか?ちょ〜ど!お腹空いてたんです。ありがとうございます!」
私は、小さな籠を持つ住民らしき人の手をガシッと掴んで引き留めた。
「ひっ…!」
案の定、その人はびくっと飛び上がる。
そして、慌てた様子で両手を引き抜いた。
「ど、ど、どーぞー!!」
で、そのまま逃げてしまった。
…何であそこまで怯えるんだろう?
私は鬼鮫さんを見上げると、冷めた目で住人を見送ったあと、私と籠を見比べて肩をすくめる。
「精々腹を壊さない様に気をつけてくださいよ。私は面倒なんてみませんからね。」
……。
私、医者なんですけど。