第14章 ♪龍地洞ってどんなとこ?
一歩足を踏み出すと、シャリ、という音が響く。
思わず舌打ちが出た。
かなり冷え込んだのだろう。霜柱が立っていたのだ。
彼は、面倒そうに足裏にチャクラを溜めて霜柱の上に乗ると、隣の棟へと移動する。
ドアをそっと開けると、鍵はしてなかった。
そこで呆れはしたが、手間が省けたという思いが勝る。
ザッ、ザッ、という微かな物音を聞きつけて、白虎の片割れがむくりと頭を上げた。
「…サソリ?」
馴れ馴れしく呼び捨てにされた事に、若干の苛立ちはあったものの、子供の戯言だと納得すればすぐに気は収まった。
彼は白虎を素通りし、寝ているエニシを静かに見下ろした。
「起きろ、ライール。」
そばで聞いていた白虎は怪訝そうにサソリを見るも、彼は気にせずエニシを観察する。
呼ばれた彼女は応える気がないのか、エニシはすやすやと寝入ったまま。
「…おい、このまま寝首掻かれてもいいのか?」
その言葉に、寝入っていたのが嘘のように鋭い気を纏い、冷たい瞳がこちらを向いた。
「…何の用?」
「随分だな。短い誼だが折角と思って声くらいは掛けておこうと思ったのによ。」
「どういうこと?」
ライールが問うと、サソリは無言のままくいっと顎でしゃくった。
「エニシ…?」
事の成り行きを黙ってみていた白虎が不安そうにエニシの名を呼ぶと、ライールは首を振りながら宥め始めた。
「ついてきてはダメよ。ここで寝ていなさい。」
白虎は戸惑いながら、どうして良いのか分からないとばかりに狼狽える。
エニシとは別人である事に気付いて混乱しているのだろう。
「エニシ、私も…」
「待ってて頂戴。大丈夫よ。」
有無を言わせない様子に、白虎は怯む。
そして、すごすごと伏せた。