第2章 ここから、また始まる
穏やかな空気をぶった斬るかの如く、騒々しい足音が響いてきた。
誰の足音かなんて、考えなくとも分かる。
寧ろ聞き慣れた。
「おい、お前たち!ずらかるぞ!」
やっぱりな、と私は顔を覆った。
「また負けたんですか!?」
シズネさんも毎度よく同じ反応を返せるな、と感心する。
「いいから、荷物を纏めろ!追ってくるぞ!」
こんな事もあろうかと、いや絶対あると踏んで、私達はいつでも逃げ出せる様、荷物を解いていなかった。
私達は立ち上がって、手近に置いてあった鞄を持つ。
「いつでも行けます。」
「私も行けます。」
それを見た綱手様は、にやりと笑う。
その時、少なくない人数の足音が騒々しく響いてきた。
「よし、行くぞ!」
言うが早いか、綱手様は窓から外に出て、私達も急いで後に続く。
「出てこい、コラァ!!」
「負け分きっちり払えや!!」
ドスの効いた怒鳴り声に、私とシズネさんは綱手様に呆れ顔を向ける。
だが、それで小さくなる様な人ではない。寧ろ、平然としている。
…まぁ、小さくなるくらいだったら、とっくに賭け事からは身を引いているだろうな。
声が遠のいたところで、私達はそろりと屋根伝いに移動してこの街を出た。