第5章 やっと追いついた!
「とにかく!イタチにとっても悪い話じゃないと思うの。診て異常がなければそれで良し。でしょ?それに医術は貴重だと思うな。歩く救急箱の様なものだよ?」
押しに押すと、イタチは逡巡しだした。
よしよし!いい感触♪
イタチは考え後、じぃっと私の顔を見て小さく息をつく。
「…分かった。だが、場所を変える。」
イタチは鬼鮫にアイコンタクトを送り、二人は頷き合う。
なになに、どういう事?
「この森を抜けた先に小さな町がある。今からそこに向かうぞ。」
へぇ、そうなんだ。
私は立ち上がった。
イタチも隣で立ち上がった瞬間、口許を押さえて咳き込み始めた。
「ごほっ…!げほっ!」
一際強く咳き込んだその手には、べっとりと血糊が…。
「イタチ!」
「ぐっ…!こんな、とき、に…。」
そのまま、倒れ込んでしまうのを既の所で支えた。
その顔は青白く、少し朦朧としている。
「…大分、無理をしていましたからね。体が限界だったのでしょう。」
鬼鮫の言葉は、まるで日常の様な感じにも聞こえる。
「イタチさんをこちらへ。」
私は、背負う為にしゃがんで背を向けた鬼鮫に、イタチを預ける。
「…すまない…。」
小さく詫びるイタチに、鬼鮫はちらりと視線をやってすたすたと歩き出す。
「何してるんですか、行きますよ。」
「は、はい!」
私は鬼鮫に促されて歩き出した。