第13章 思ってたよりも綺麗な人
「…余計なお世話ですけど…。世界に目を向けるのもいいですが、身近な人に目を向けた方がいいと思います。亡くなってからじゃ、本当の声って、もう聞けないですよ?」
どう足掻いたって、私はもう、兄ちゃんの声を聞くことができない。
「それはどういう…。」
「長門さんは…小南のありのままの声を聞いたことがありますか?」
「止めて、エニシ。」
小南は痛みを堪えるように、固く目を瞑る。
「ごめん…。でもね、小南。死んだらもう、伝えたいと思っても伝えられないよ?」
「いいのよ、これで。」
頑な小南を見て、私は少し肩を落とした。
伝わらないもの、なのかな…。
「まるで、俺達が死ぬような言い振りだな。」
長門さんの言葉には少し棘がある。
死ぬということは、負けるということだ。
気分は悪くなるだろうな…。
私は言いにくくて、二人から目を逸らすように視線を落とした。
「…本の通りならば、あなた方は、あと二、三年の内に命を落とします。」
二人の息を呑む音が聞こえた。
「…俺の計画は…頓挫するってことか?」
「…オビトが引き継ぎます。…あなたの死体から輪廻眼を回収して…」
「させないわ!そんな事!!」
怒鳴る小南の声は、まるで悲鳴のようだった。
「ふざけたこと言わないで!!私達は死なないわ!三人で平和を築くのよ!!」
そう叫ぶ小南からは、罪悪感と悲壮感をひしひしと感じる。
きっと…。
小南にとっては、今を生きているのは贖罪なんじゃないだろうか。
そう思うと、痛いくらい胸が締め付けられて、涙が出そうになる。
「帰って。」
「…分かった。ごめん。」
強い拒絶を感じる。
…嫌われたかな。
まぁ、当然といえば…当然か…。
私は双子を促して玄関へと向かう。
「お邪魔しました…。」
多分、もう二度と会わないんじゃないかと思うんだけど、さよならは…なんとなく言えなかった。