第13章 思ってたよりも綺麗な人
「…もし、神の御業を振るえるとしたら、お前ならどうする?」
十尾のことを言ってるのかな?
でも、そんなものを神の鉄槌なんて呼べない気がする。
「人が人を変えるって凄く…途方もなく凄く難しいことだなって思うんです。痛みを知っていようがいまいが、平気で人を傷つける奴は腐る程いるし、自分と同じ目に合わせてやるって真っ黒い奴もいる。反対に自分と同じ傷を負わせることを躊躇う人だって、傷を見ただけで涙を流せる人だっている。私は、神の御業を振るうのはあまり意味を成さないように思います。」
極論を言えば、世界が気に入らないなら、それを感じる自分を壊せばいい。
そうすれば、痛みなんて綺麗さっぱり忘れられるんだもの。
「…神様って何かをしてくれるものじゃないんじゃないですかね。多分、本当の神様にとって、人間って箱庭の動物だと思うんです。ただ、人間の織りなす事象の軌跡を眺めてるに過ぎない。」
もし、神様が慈悲深い存在だったら、きっと兄ちゃんを守ってくれただろうさ。
でも、現実はそうはならなかった。
「神様には、人間という種の存続なんてどうでもいいんです、きっと。極論を言えば、争いの果てに人間が地上からいなくなったっていいんだと思う。そしたら人間に代わる新たな生物が台頭するだけだから。」
「…お前とは永久に平行線だな。」
私はそれを聞いて苦笑する。
「…そうかもしれませんね。」
考え方が根本的に違うのかもしれない。
「でも、私はあなたと話せて良かったと思います。」
たとえ一端だとしても、何を考えてどう感じる人なのかを知れたことは良かったと思う。