第13章 思ってたよりも綺麗な人
この人の言葉で印象的なものがある。
「’’痛みを知るから人になる’’…。あなたはこうも言っていた。」
でも、それってどうなんだろう。
私は、痛みを知る前も人だった。
でも、痛みを知った今のほうが、’’人’’という存在から遠ざかったように思う。
「あなたにとって、’’人’’ってどんな存在なんですか?」
「人、か…。そうだな…。人は痛みを知って初めて他の痛みを理解できる。逆を言えば、それまでは獣と同じだ。欲望のままに望み、他を虐げることを厭わない。獣が狩りをするのと同じだ。無知なる人間は人ではない。」
「長門さんにとって、人とは’’他者を慮ることが出来る者’’、ってことですか?」
「痛みを知れば、簡単には他者を傷付けなくなるだろう?」
そうとは、限らない気がする。
「どう、なんでしょう…?私はそれには賛同しかねます。」
現に、オビトも長門さんも、理由はどうあれ傷つける側になってる。
質が違えど、やったこと、やってることは一緒だ。
「それは、お前が痛みを知らないからじゃないのか?」
中々、カチンとくること言うじゃない?
「…兄を目の前で失ったことは痛みに入らないとでも?」
そう言ったら、少しの困惑が浮かぶ。
「どういうことだ…?」
「うちは一族はイタチによって全滅の道を辿りました。けれど、それはイタチが当時里の暗部として果たした責務に過ぎません。もっと言うと、イタチと兄と私は、そんな運命を辿らないように手を尽くした結果、それを逆手に取られ、兄は志村ダンゾウに殺されました。」
「うちはシスイ?」
小南の問いに、私は頷きを返す。
「イタチが殺したって…聞いたことあるけれど…。」
「表向きはそうなってるよ。実情は自殺幇助だ。止めを刺した形って言った方が正しい。」
そう言ったら、二人とも息を呑んだ。