第12章 懐かしい顔と新しい顔
「…自分で…動けば良かったのよね。…守りたいのなら尚の事。シスイの意に反してでも、…この子を殺すことになってでも。失うくらいなら、犠牲にすれば良かったのよ。」
淡々と紡がれる言葉は、段々と冷たく昏く響いていく。
「だから…。シスイを守れなかったエニシもイタチも、私は許せない。会いたくないの。」
サソリを見つめる瞳は、何処までも昏い。
だが、昏い中にも光が見え隠れする。
許せないながらも、まだ慈しむ気持ちが燻っているようにも思う。
許せないのならば、消してしまえばいい。
それをせず、遠ざけるに留めるのは、そういうことなのではないだろうか。
「…割り切れないのか?」
サソリの言葉に、ライールの瞳が揺れた。
次いで、悔しそうに瞳が逸らされた。
「…そうね…。その通りよ…。切り捨てられずにいるわ…。」
「そうか…。」
ー容易ではない、か…。
サソリは、そっと月を見上げる。
その瞳には、随分と朧気になった父と母の姿が浮かんでいた。