第12章 懐かしい顔と新しい顔
「どうする、か…。どうするんだろうな。」
「あなたにも、あるの?両極端の想いが…。」
この問いに、素直に答えるのは酷く抵抗があった。
だが、ありのままを答えなければ、ライールはきっと応えないだろうとも思う。
「…あるな。遠い昔の記憶だが、未だに残っている。」
改めて言葉にすると、それは酷く滑稽でガリガリと掻きむしったようなひりつく痛みがあった。
「お前は…その想いを消したいか?」
「…あなたは消したいの?」
「消したいとは思う。だが、未だに捨てきれずにいる。」
捨てたくても捨てられないのではないか、とも思った。
「そう…。」
ライールはそっと目を伏せる。
「私は…。かつて、イタチに勝手な希望を抱いていたの。」
話し始めるライールの声には、戸惑いが混じっている。
「兄であるシスイを守れたのは、あの時は…あの子しかいなかった。あの子なら出来た筈なの。」
彼女はゆっくりと言葉を紡いでいく。
「…分かっているのよ。十二歳の子が出来ることなんて限られている。…雁字搦めの一族の中で里との板挟みになっていることも分かっていた。…けれど…。」
ぎゅっと握られた両手からは、彼女の葛藤が垣間見える。
「私には、何よりシスイが大事だったの。シスイさえ生きていれば何を失っても良かったのよ。…でも現実は残酷で、私は一番失いたくない人を失った。」
悲し気に自嘲する姿は酷く痛々しい。
「あの子にシスイを止めるのは簡単ではなかったのでしょう。彼の決意は固かったから…。それでも、止めてほしかった。守ってほしかったのよ。…あの時、守ってくれると頷いてくれたのに…。」
震える吐息を整えるように、ライールは長く息を吐き出していく。