第12章 懐かしい顔と新しい顔
この目を私はよく知っている。
憎悪の写輪眼。
「…っ。」
あの夜をまざまざと思い出す。
一族の顔が一人一人浮かんでは消えていく。
父さん…
母さん…
『呑まれるな。』
誰かにそう言われた気がして、はっと我に返った。
その瞬間、振り被るサスケを認識して、咄嗟に回避行動を取りながらクナイで刀の威力を去なす。
「くっ…!」
あっぶな〜…。
即死しかけたわ…。
はあぁ…。
ダメね。
しっかりしなきゃ。
密かに深く息を吸い、細く長く息を吐く。
大丈夫。
約束を果たすまでは、死ねない。
死ぬわけにはいかない。
そうでしょ?
昔、カカシ先生が言ってた。
私のいいところは底抜けに明るいこと。
大丈夫、私なら出来る。
めげない。
しょげない。
笑うのよ、エニシ。
「…何が可笑しい?」
「可笑しくはないよ?ただ、大きくなったなぁって思ってさ。」
「ふざけてるのか?」
「いんや、大真面目。」
「ちっ…。お前は昔からふざけた奴だったな。」
「そうかな?」
「イタチは何処だ?」
無視されたし。
「…イタチは今日来てないよ?」
「居場所を吐けっつってんだよ。」
やっぱ、はぐらかされてはくれないよね〜。
っていうか、私がイタチと一緒にいるってこと知ってるのね。
耳が早いなぁ。
「聞いてどうすの?」
「お前ら纏めてぶっ殺してやる。」
「あら、私も?」
「あぁ、そうさ。」
「ふ〜ん、どうして?」
聞いたら、みるみる顔が怒りに歪んでいく。
「どうして、だと…?惚けるな!!」
突然の怒鳴り声に反射的にびっくりした。
「お前もイタチと同じだ!一族を裏切っておいて、よくも”どうして”などと口に出来たな!!」
裏切り者、か…。
違うよ、って言おうかとも思ったけど、言葉を飲み込んでしまった。
イタチの想いを台無しにしちゃうって理由もあったけど、私の声はこの子には届かないって自分の中で線引きが出来ちゃったんだ。