第12章 懐かしい顔と新しい顔
「…痛いわね。何するのよ。」
「「それはこっちのセリフだ!!」」
思わず出たセリフが影分身とハモった。
さすが、私。そっくり。
天井を改めて見上げると、隅から隅へと這いずっている蛇の胴体があり、先端には言わずもがな大蛇丸。
顔を押さえてたから、銀トレイがヒットしたんだろうな。
「どっから出て来たんすかっ!!」
入ってくる所なかったじゃん!
「何してんすかっ!普通に出て来てくださいよ!」
これは影分身のセリフね。
「…あなたに普通を求められるとは思わなかったわ。」
不服そうだね。
こっちが不服だよ!
「態々お化けみたいな出方するからだと思いますが!?そして、私が普通じゃないみたいな言い方しないでくれます!?」
怖いんだよ!!
この人、絶対感性が普通じゃない!!
「あら、行儀悪く人の家で勝手に漁ってて文句言える立場だと思ってるの?」
「あー…それ言われちゃうとね…。」
私も非常識だったわ、確かに。
「…お痛が過ぎるわね。ここを見つけちゃうなんて。」
視線を追うと、私が持ってた記録書だった。
「もう見つけちゃったの?」
「まぁ、ヒントだけですけどね。場所は滝隠れとの境、雨隠れの近くってところですかね。」
態と言ってみたら、大蛇丸はニタっと笑う。
大当たり〜ってか?
「馬鹿なのか利口なのか分からない子ね。」
「馬鹿にし過ぎると痛い目見るんじゃないですかねぇ。」
密かにぐっと構えると、それだけで意図がバレたらしい。
出入り口を長い胴体で塞がれてしまった。
「逃がさないわよ。」
「意地でも逃げます。」
「諦めの悪い子ね。」
私は瞬時に発煙弾を撒いて、豪火球を一発放った。
煙にも多少火が移ったから、これで温度探知は使えない筈。
同時に、影分身がドアから離れた壁側に風穴開ける。
硬かったらどうしよう、って心配は一瞬だけだった。
人一人分の大穴は簡単に開き、私達はそれぞれ反対方向に駆け出した。