第12章 懐かしい顔と新しい顔
「記録…記録…記録…。」
記録ばっかや。
日付でいってみるか。
一番古いのが…
「これか…。」
約25年前か。
うーん、違うなぁ…。
時々、人体実験も混じってる。
見てて気持ちのいいものではないな。
「確か…。」
綱手様が今53歳だったっけ。
とすると、28歳位の時の記録ってことになる。
「…うっわ…。」
こんな若い時からこんなことしてるの?
よく飽きもせずにやってられるよね。
「根っからのマッドサイエンティストだな。」
手に取ってはパラパラ捲っていき、蛇の記述があると止まる。
それを繰り返すこと数度。
「んん…?」
これは…。
「…滝の国との境…?」
記述は15年前。
なんか、っぽいな。
それに雨隠れが近くにある所だよね、これ。
「確か…。」
地図を思い浮かべる為に紙面から目を離した時、視界の端に何かが映って反射的にその部屋を飛び出した。
「何したん?」
影分身が駆け寄って来て、私が出て来た部屋と私を見比べる。
私がガシっと腕を引っ掴むと、ぎょっとした顔で見てきた。
「ちょっ、ちょっとさ、中見て、中!上の方!」
何だったんだ、今の…。
お化けなんて信じるタイプじゃないんだけど、上に人がぶら下がってたんだよね。
ここ密室だよ?
人が入って来れる所なんてないのにさ。
人の出入りは影分身に見張ってもらってたんだから、誰もいなかったのは確かなのに。
「ねぇ、誰もいないよ?見間違いじゃないの?」
部屋の中からそう言われて、おかしいなぁと思いつつ黙り込んだ。
私ももう一回見てみようかな。
そう思った時、ちりっとするような肌の違和感と鳥肌に、咄嗟に目の前にあった銀トレイをひっくり返して振り回して逃げた。
すると、何かに当たったのか、もう一度手元を見た時にはトレイはひしゃげていた。