第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「わあぁぁん!!カカシ先生助けてえぇぇ!!」
叫びながら手を伸ばすエニシに、カカシは満面の笑みで手を振り返す。
「バイバイって何よ。裏切るのかこのヤロー!!」
「今回は白紙ってことで。」
「約束したじゃん!」
「鬼鮫サンに聞いてみたら?」
引き摺られながらばっと後ろを振り返るも、鬼鮫は彼女と視線を合わせる気がないらしい。
「報酬は没収とした方がいい罰になりそうですねぇ。」
「ヤダ〜!こんなん働き損じゃんか〜!!」
「約束を破るあなたが悪いんですよ。」
「折角のチャンスが〜!!」
ぎゃあぎゃあと駄々を捏ねるエニシにも、どこ吹く風で二人は去って行った。
「…なんだかどっと疲れたわ。」
「僕もです…。まさか、あの二人に出会すとは…。噂通りの瞳術でしたね。」
メイと長十郎はへろへろと座り込んだ。
「大丈夫か?」
カカシが歩いて来る白の方を向くと、彼は苦笑を返す。
「えぇ、まあ。あのお二人を相手にこの程度で済んで良かったですよ。」
「ホントにな。」
「またしてもエニシさんに助けられました。」
「あいつはそんなつもりないだろうけど。」
「そこがあの人の魅力なんですよ。」
忍の様で忍とは程遠い。
向いてないと言っても差し支えないだろう。あくまで良い意味でだが。
血塗られた孤独よりも、温かい人の輪の中が似合う。彼女はそんな人だ。
「確かにな…。ま、騒がしいのが玉に瑕だけどね。」
「ふふっ。忍べない人ですからね。」
イタチと真反対なエニシ。
忍らしくない彼女が、忍の闇からイタチを掬い出してくれるんじゃないか。
カカシはそんな風に願いながら、三人が消えていった方を見やった。