第10章 ルーツを探しに出かけましょ
―場の空気に合ってないと思うのは…俺だけか?
「…イチャつくなら他所でやってもらえませんかねぇ。」
―俺だけじゃなかったね…。
鬼鮫の言葉にエニシが頬を染めてぶんぶんと首を振る。
「いイチャつくって何ですか!そそんな事してないじゃないですか!!」
「ほう?私の気のせいだと?」
「き気のせいですよ!私は真面目に、大真面目にイタチのお邪魔虫してるんですから!」
その言葉にその場にいた全員が、彼女に生ぬるい目を向ける。
「ななな何ですかその目!!」
―そんな真っ赤な顔で言われてもな…。
もう一人の当事者は馬鹿らしいとばかりに首を振る。
「緊張感がなかったのは認めよう。」
そう言って、再び構えたイタチからは場に合った殺気が漂った。
対するエニシはにっと楽し気に笑い、パシっと拳で掌を叩く。
「よっしゃ!どんと来い!」
それに呼応する様にイタチの目が写輪眼から万華鏡写輪眼へと変わっていく。
「へ…!?ちょっ…!」
すると、見る間に地面から紫の手が伸びてきて、呆然としている間に絡め取られていく。
―幻術か!!
カカシは慌てて写輪眼で解術を試みるも一向に解ける気配はない。
―万華鏡による幻術…!
まさか一度に複数仕掛けたのではないだろうか、と背筋が凍る。
だが、突然に術は切れた。
ぱっと目を開くと、ぼふんと隣から音がする。
おそらくはエニシの影分身だ。
白はイタチから大きく距離をとっていることから、エニシの影分身が移動させたのだろう。
彼もどうやら幻術にかかった模様。
ぐったりしている白をエニシが起こしている。
自分もそうやって助けられたのだろう。
そして違う方を見ると、そこにはイタチの目と頸に手を当て治療しているエニシがいた。
イタチもイタチで素直に地面に座っている。