第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「折角の全力を出せる機会。無駄にしちゃあ勿体無いでしょ?」
「…はあぁ…。お前って奴は…。」
カカシは腰と額に手を当てる。
次いでイタチを盗み見ると、何とも言えない困惑を浮かべていた。
―そりゃそうだ…。
奪うつもりなのだから、当然相手を死に至らしめることも想定してる筈。
だが、イタチとて好き好んでやっているわけではないだろう。
彼が心優しく正義漢であることをカカシは知っている。
害する対象がエニシならば、他者を手にかける以上の痛みとなってイタチを蝕むだろうに、エニシ本人はそれを分かっていない。
「とにかく、イタチだったら相手に不足なし。ここはお任せくださいな。」
「…本当に、憎たらしいくらいに無神経ですね。」
「ありゃま、そりゃどうもすみません。」
「まったく…。」
呆れる鬼鮫にエニシは少し戯けて返す。
おそらく本気の言葉ではないのだろう。
気に入らないと思いつつ、どこか憎めないのがエニシという人間なのだから。
「んじゃ、久々に本気出しますか!」
エニシの言葉を皮切りに戦闘が始まった。