第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「…それでも、レスターはとても幸せそうだった、と。彼に会った人は皆、そう言っていたわ。」
「じゃあ…。その…ミアって人は…。」
「風の便りによれば、幸せだろうって話だったけど…。本当のところはよく分からないわ。」
「おそらくはもう生きてはいませんよ。私の一族は殆どが死に絶えてます。私は所謂生き残りなのでね。」
鬼鮫さんの言葉に、驚きを隠せなくてばっと見てしまった。
そんな私を鬼鮫さんはちらっと見てから前を向く。
「私と同じ見た目の人がいたのなら、噂くらいは耳にしてもいい筈ですがね。けれど、そんな話は一度も耳にしたことがない。」
…ってことは、噂に上ることもないくらい前に死んでるってこと、なのかな…。
「それに、両親の見た目は二人とも人間でしたよ。私のような見た目ではありません。尤も、私が拾い子であるという可能性もありますが。」
「隔世遺伝なら説明が付きますよ。」
自分を傷つけること言うのは良くないと思う。
そう言ったら、鬼鮫さんは怪訝な顔で私を見てきた。
「…もし私が、両親との仲が悪かったら、という可能性を考えてないんですか?」
「なくはない、というくらいは頭に過ってます。けれど、鬼鮫さんは悪くなかったんじゃないですか?」
でなかったら両親のことを話す時、もっと刺々しくなってると思う。
反対に、白は両親や一族のことを話したがらない。
それは、あの子と両親の間に何かがあったからだと私は思ってる。
鬼鮫さんは、少し目を瞠ったあと、ふっと少しだけ柔らかく笑う。
これまた、初めて見る穏やかな顔。
「えぇ、確かに。両親との仲は良好でしたよ。」
「君のご両親は…健在なのか?」
ライアさんの問いに、鬼鮫さんは首を振る。