第10章 ルーツを探しに出かけましょ
…でも、専ら気になるのは別のこと。
「すんごく興味あるんですけど、先に鬼鮫さんのこと知りたいなぁと。」
そもそも、それが知りたくてここまで来たんだし。
「そうだったな。さて…何から話そうか。」
「そもそも何故、関わらない筈の人間の血を鬼鮫さんは引いているんでしょうか?」
聞いたら、彼らは一様に困った感じで互いを見る。
中には鬼鮫さんをちらっと見ては俯く人もいて、いい事情じゃないことは分かる。
当の鬼鮫さんは皮肉げな笑顔を浮かべたまま成り行きを見守るつもりらしい。
うーん…。
これは聞き出しても良いのやら…。
気にしない人なんだろうとは言え、ライアさん達のあまりいい感情でないところを見ると、気が進まない。
って…、本を正せば私のせいなんだけどさ。
私は一つため息をついた。
鬼鮫さんを不愉快にさせたいわけじゃないし、どうしても聞き出したいわけでもない。
この際、帰るか。
鬼鮫さんがエルフの子孫であるって事さえわかれば万々歳だ。
そう思って腰を浮かせた瞬間、ライアさんが口を開いた。
「エルフが人間と交わらないのは、人間の性質にある。だが…、稀に人間に心を寄せる同胞が現れることがあってな。」
「それは…。禁断の恋に落ちる、的な?」
代表的なありがち展開。
「まぁ…そんなところだ。」
苦笑するライアさんに、その他の人も苦笑を浮かべたり顔を曇らせたりと反応は様々。
え、そんなに悪い話じゃないじゃん。
寧ろ、美談に入る話なんじゃないの?
物語にありがちなロミオとジュリエット的な。
「人間はそういう物語が好きなようだが…、我々からするとあまり面白くはない話なんだよ。」
「はあ…そう、ですか…。」
これが文化の違いってやつか?
理解できん。
「まぁともかくも。んじゃ、鬼鮫さんのご先祖様にも人間に心を寄せた人がいて、その人はどうしたんですか?」
「勿論、人間界に渡ったわ。ここに戻ってきた者は誰一人としていない。」
別の人が答えてくれて、ライアさんも沈んだ面持ちでため息をついた。
「その者達が今どこで何をしているのかは分からない。」
「それに、彼の場合はもう何世代も血を交配しているみたいだから、誰の血族なのかも分からなそうだ。」
そっかぁ…。
会ってみたかった気もするなぁ。