第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「知らない誰かから渡されたものでして。肌身離さず持っているように、としか聞かされてないもので。」
これが何かすら、未だに知らないんだよね。
他の人も触ろうとしては、どろっと溶けて変形するから、誰一人として手に持つことが出来ないでいる。
「ねぇ、それをくれた人はどんな人だったの?」
「どんな…?」
あれ…?
前にもアンコさんか誰かから、同じこと聞かれた時は答えられてた気がするんだけど…。
どんな人だっけ?
女の人だったかな…男の人だったかな…。
髪は…?
肌の色は…?
「何にも覚えてない…。」
忘れてることすら忘れてる…。
アンコさん達が洞窟でのことを覚えてないみたいに、綺麗さっぱり忘れてる。
「なんで…?」
「さて…?それは我らが聞きたいところだが…。」
…ぞぞぞおぉ…。
どうなってるのおぉ…?
「何て顔してるんですか。単にあなたの悪い記憶力のせいでしょう?」
「いやいやいや、そんな単純な話だったら気にしませんて!っていうかナチュラルにディスり過ぎです!」
さらっと言ったぞ、この人。
しかも、はあ?みたいな顔しないでよ。
「だから、これ一人で手に入れたわけじゃないんですって。もっと六人くらいでどっかの洞窟みたいな所に入った時に貰ったんですよ。」
「だから、誰に?」
「それは、だから…、そこだけがすっぽり記憶が抜けてるんですよ。走馬灯のようなホームビデオのような思い出の幻術がどんどん流れたのは覚えてて、その次の記憶は鍵を受け取った場面なんですよ。ただ、肌身離さず持ってるように、みたいなことは言われた覚えがあって。それ以外の記憶が無いんですよ。こんな忘れ方って普通ないでしょう?」
一個覚えてれば、大抵は八割、九割思い出せるものでしょ?
「それはまぁ…。」