第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「伏せろ!」
怒号に、咄嗟に地面へと低く伏せると、鬼鮫さんは鮫肌で滅多切りするように次々と水球を潰していく。
けど、数が多過ぎる。
鬼鮫さん一人じゃ多勢に無勢だ
どうしたって援護が必要。
水に勝るのは火。
「火遁!火炎放射!!」
真っ直ぐに前に伸びた太い火柱は、離れた所にいる敵方に届いたらしい。
微かに悲鳴や響めきが聞こえた。
けれど、水の蔓延したこの中だと、威力はいつもと比べれば劣る。
それでも、この様子だと一角は崩せるかもしれない。
とくれば、これだ!!
「火遁!豪火球の術!!」
思いっきり吹いたから、かなりのデカさに成長した。
豪火球は霧の合間を縫って、威力そのままに敵方まで届いたらしい。
さっきよりも悲鳴や響めきがかなり聞こえてくる。
その勢いに乗って、続け様に火炎放射を辺りを撒き散らすように噴きまくり、時折、豪火球を混ぜて滅多矢鱈に火を噴きまくった。
どうも、霧が目眩しになってるみたいで、逆に有利になってる模様。
あちらさん、対応出来ないでいるみたいで面白いくらいに手応えを感じる。
飛んでくる水球もかなり減ったんじゃないかな。
「となれば、影分身っしょ!」
突撃〜!!
ボボン!という音と共に二体が霧の中に入っていく。
すると、彼方此方から阿鼻叫喚の悲鳴が立ち上がった。
予想通り!
その時、ぶわっ!と空気の重低音が鳴り響いたかと思ったら、突然雲が巻き上げられるように霧が立ち登り、何処へともなく消えていった。
飛んでくる水球もそこでぴたりと止む。
視界は良好となり、そこにいたのは…。
「わぉ…。鬼鮫さんがいっぱい…。」
場を埋め尽くすほどの人、人、人…。
それも、肌の色が明らかな青。
「…人間風情が…。」
低〜い怨嗟の声がぽつりと聞こえた。