第10章 ルーツを探しに出かけましょ
砂利道のようなエリアを只管に歩く時間が続き、入れば入るほど霧が深くなっていくように思う。
「もう三十分くらい歩いてますかね。」
「まぁ、そんなところでしょうか。」
鮫肌も飽きてきたのか何なのか、最初に比べて吸いが悪くなってるみたい。
「油断してると簡単に逸れそうですよね。」
隣にいる鬼鮫さんでさえ、輪郭がぼやっとするほど。
「逸れたら探しませんから。」
「冷たっ!」
「それよりもどうするんですか。このままだと骨折り損になりますよ?」
写輪眼に切り替えたらどうなるんだろ。
「うわ…。」
全面真っ白け。
鬼鮫さんの姿さえ見えなくなる。
「何か見えました?」
「いんや、余計に真っ白々になりました。」
「…あぁ、霧自体にチャクラが含まれてるからですか。」
「多分。しかも、含有量がかなり多いんですね。」
うーん…他には…。
あ、円はどうかな。
「…っ!?」
え、待って見間違い?
全方向囲まれてるんだけど…。
切り替えたと同時に見えた光景に、びっくりしすぎて写輪眼自体を切っちゃった。
すー…、はー…。
すー…、はー…。
もう一回。
「ひっ…!?」
思わず鬼鮫さんの腕を引っ掴んだら、速攻で引っ剥がされた。
…相変わらず冷たい人だなっていう恨み辛みが頭を過ぎる。
「何なんですか。」
「囲まれてるんですよ!四方八方全部!」
鬼鮫さんにも漸く事の大きさが伝わって、すぐさま背中合わせで臨戦態勢になった。
「数は?」
「数え切れません…!」
「馬鹿なんですか、あなたは。そういう時は、凡そを言うものですよ。」
少し苛立ちの混じった叱責に、私は意識を凝らしてざっと数える。
「50…いや、60はいるかと…!」
そんなやりとりをしている間に大きな何かが彼方此方から飛んでくる。
「何か来た!」
霧の合間を縫うようにして現れたそれは、人がすっぽり入るほどの水球だった。