第10章 ルーツを探しに出かけましょ
「それは過保護と言うものです。イタチさんが無理を押してまでやると決めたのなら、あなたは待ちなさい。それが”尊重する”ということです。万が一病状が悪化したとして、あなたには治すだけの技術があるんですから、治せば済む話です。それとも何度も治すのは嫌だとでも?」
私は、ぶるぶるぶるっとかぶりを振る。
「嫌じゃありません。苦でもないです。」
「なら、何度でも治すことですね。」
「…心は?簡単には治せませんよ?」
「それこそ今更な話だと私は思いますがね。あなたはイタチさんにとってみれば罪の象徴と言えるのでは?」
ぐっさり刺さりました…。
ちーん…状態です…。
「それでも、傍に置くと決めたのは他ならぬイタチさんですよ。イタチさんはあなたを尊重しました。ならば、あなたに出来ることはイタチさんを待つことではありませんか?」
「…はい…。」
でも…。
手ぶらで帰るのは…なんだかなぁ…。
「分かったなら…」
「その代わり、鬼鮫さんのルーツの旅に付き合ってもらえませんか?」
二ヶ月もやきもきしながらじっと待つなんて、ちょっと出来る自信がないわ。
案の定、鬼鮫さんの顔にみるみる渋面が浮かんできた。
「…本当に、ただでは起きない人ですね。」
「お願いします!」
秘技!頼み込みの術よ!
…今に誰かに怒られそうだな…。
両手を合わせて拝むように鬼鮫さんに向けていると、少しして、盛大なため息が降ってきた。
「…手を煩わせないでくださいね?」
やった!!
ばっと顔を起こして満面の笑みを浮かべた。
「はいっ!!」