第9章 久々に血が騒ぐわ…!
「鬼鮫を相手取ったんだってな。」
「相手取った内に入るかな?あれ。今思うと、かなり手加減されてたし。」
「鬼鮫がか?」
「うん、そんな気がする。」
水牢の術だって、捕えたんだからそのまま水中で竜巻なり起こして気を失わせることだって出来ただろうし。
漁船港で隠れてた時だって、姿は見えなくても声はするんだから、態々話しかけて注意を向けさせる前に捕えるなり半死させるなり、やり方は幾らでもあっただろうに。
思い出してる内に、もしかしたら鬼鮫さんは私の意思を汲んでくれたんじゃないかと思ったんだよね。
「…お礼、言いたいんだけどなぁ。」
でも、言ったら色々と台無しになる気がする。
“気遣いに気付きましたよ”って言うようなものだし。
それで喜ぶ人だったらともかく、鬼鮫さんはそういうタイプじゃないと思う。
「…言わない方がいいだろう。」
イタチの言葉に、思わず苦笑した。
「やっぱり?」
「あぁ。俺がその立場でも言われたくはないな。」
「イタチは鬼鮫さん派?」
「派、というほどでもないが…。そもそも、気づかれたくはない、といった方がいいか。」
…何で?
「…照れくさいってこと?」
首を捻りながら聞き返したら、少し苦い顔をされた。
「…まぁ、そんなところか…。それを態々言われることで周知されるのもあまりいい気はしない。」
「ふ〜ん…。」
分かるような…分からないような…?