第9章 久々に血が騒ぐわ…!
その日の夕方、うとうとっとしてるところに、誰が入ってきた気配がした。
と思ったら、ベッドサイドがそっと沈み、ぱちっと目が覚めた。
「悪い、起こしたか?」
声を辿ると、心配そうに見下ろすイタチと目が合って自然と口角が上がる。
「ううん、平気。うとうとして目が開かなかっただけだから。」
体を起こそうとしたら止められて、元の位置に戻った。
「いい、そのままでいろ。」
イタチはそう言って、すっとおでこのタオルを取ると、タライに浸してぎゅっと絞る。
そしてまた、おでこに乗せてくれた。
「ありがとう。」
お礼を言うと、イタチは少し笑ってから私の頬に指をそっと当てた。
「まだ熱いな。」
「今日いっぱいは多分このままだね。明日には下がると思うけど。」
「何か食べれそうか?林檎と蜜柑なら手に入ったが。」
「ほんと?助かる〜。じゃあ林檎貰っていい?」
「あぁ、剥いてやるから待ってろ。」
「うん。」
イタチは私の頬をひと撫でしてから、テーブルに移った。
そして、小皿と果物ナイフを用意すると、手際よくシュルシュルと剥いていく。
…さすが。何でも出来るスーパーマン。
「起きれるか?」
「うん、大丈夫。」
ゆっくりと起き上がって布団を少し折り畳むと、すっとフォークと一緒に差し出されて、受け取った。
「いただきます。」
しゃり、という小気味良い音に、じゅわっと広がる甘酸っぱい味と爽やかな匂い。
食欲は未だないけど、これだったら少し食べれそう。
私の様子を見て、イタチが笑う。
「大丈夫そうだな。」
「ごはんはまだ無理だけどね…。これなら食べれそうだよ。そうそう、シズネさんから薬貰えたから自力で治すより早く治るよ。」
私が包み紙を取ってふるふるっと見せると、「そうか」と言って微笑んだ。