第9章 久々に血が騒ぐわ…!
社長室のドアがガチャリと開けた斬不斬は、中を見た瞬間、嫌そうに顔を歪めた。
「何だてめぇ、まだいたのかよ。」
「ふん、何処にいようと私の勝手ですよ。」
「はっ、そうかよ。…で?エニシは帰ってきたのか。」
開口一番に憎まれ口を叩いた後、斬不斬は白に尋ねた。
「えぇ、帰ってきましたよ。サクラさんを連れて自室に戻りました。怪我などはないようです。」
「そうか…。」
斬不斬は内心ほっとしながらも席へ戻り、どかっと椅子にもたれた。
「さすがうちはと言うべきか。こいつから無傷で逃げ帰ってこれるたぁな。」
それを聞いた白は苦笑を返した。
「そうですね。エニシさんが凄いのか、鬼鮫さんの手心があったのか。」
二人は、顔色一つ変えることなく鬼鮫を見やると、彼は知らぬとばかりに肩をすくめた。
「逃げ足の速い人でね。」
そう言って立ち上がると、何も言わずに部屋を出て行った。
それを見送った白はくすくすと笑みをこぼした。
「心配してたなら、そう言ったら良かったのに。」
「あいつが人の心配なんぞするわけねぇだろ。」
白の呟きを鼻で笑い飛ばした斬不斬は、溜まっていた書類に手をつける。
それを見た後、白は鬼鮫が出て行ったドアを見ながら頬杖をつく。
「案外と、あり得ると思うんですけどねぇ…。」
「どうだかな。」
それきり二人の会話は途切れ、部屋には書類の音だけが響いていた。