第9章 久々に血が騒ぐわ…!
林の中に入って間もなく、イタチは足を止めて振り返った。
「多くは言えませんし、他言はしないでもらいたいのですが。」
「あぁ。」
カカシが頷いたのを見て、イタチは渋々口を開いた。
「”道はないのか”、という問いでしたか。それに対する答えは、”それしかあり得ない”、です。うちはにはうちはの慣わしがあるのです。俺を憎むことでサスケの能力は飛躍的に上がる。身を守る為には避けては通れません。」
「身を守る為?」
「エニシが話していたでしょう?ダンゾウは今も虎視眈々とサスケを狙っている。手を拱いていては喰われるだけです。」
「それとお前を憎む事とどう関係がある?」
「俺は…、一族を根絶やしにしました。本当ならば、エニシは勿論、サスケにも顔向け出来ない許されざる行為です。」
イタチは少し遠くを見るように、昏い目を浮かべた。
「任務だから仕方がなかった、などという言葉は言い訳に過ぎない。失ったものは戻らないのですから。それでも、あの時は…それ以外の道は無かった。」
仄暗く沈んだ瞳は、カカシを見ているようで見てはいない。
まるで懺悔するように、イタチの両手は握り込まれる。
「許されたいとは思っていません。サスケには俺を憎む権利がある。だから、思うがままに憎んでいいんです。」
そう言ったイタチは、少し苦しそうに眉根を寄せて胸元の服を握り込んだ。
「それに、怒りは動力になる。何より瞳術を飛躍させる。…だから、許さなくていいんです。」
全身に諦めの色を纏い、イタチは言葉を切る。
「…エニシは、いいのか?」
イタチはそれを聞いて、力無く笑う。
「エニシは…。あいつの好きにさせることが罪滅ぼしになりますから…。」
カカシは、それに呼応するように目を伏せた。
「エニシを傍に置くのは…罪滅ぼしだけか?」